毎日ケアしている肌。でも実は肌って色を認識できるってご存じでしたか。
肌は体の内部を守るためだけでなく、実に様々な機能を持ち合わせています。
今回はその驚くべき秘密に迫り、日々のスキンケアを楽しむきっかけに繋げて頂けたらと思いますので、ぜひ最後までご一読くださいね。
肌ってなに?
肌(皮膚)とは体の外側を覆う最も大きな「感覚器官」であり、また体の一番外側にある「臓器」であるとも言われています。
というのも大人の肌は、たたみ約一畳(1.6平方メートル)の面積があり、重さは約3kgほどもあるのです。
肌は、人間が生命活動を維持するための機能を沢山担っており、またメイクなどで彩られることによって心や脳にポジティブな刺激を与え、心理面においても重要な役割を果たしています。
肌が担う6つの役割
肌は以下の6つの役割を担っていると言われ、この作用によって私たちは健やかに生命活動を続けられています。
6つの役割
- 保護・保湿
肌の外側にあるアレルゲンやほこり、紫外線などを肌の内部に侵入するのを防ぐバリア機能や、体内の水分を蒸発しないようにする働きがあります。 - 感覚器官
火傷などから肌を守るために、熱い、冷たい、などの様々な感覚器官があります。 - 体温調節
暑い日に汗をかいて体温を下げたり、寒い日は毛細血管を収縮させ肌から熱が放出するのを防ぎ、一定の体温を保つ役割を担っています。 - 吸収作用
表皮や皮脂腺、毛穴から化粧品や薬品を吸収する働きがあります。 - 分泌・排泄
皮脂や汗を分泌して、老廃物を排出します。 - 貯蔵作用
皮下組織に脂肪をエネルギー源として蓄える働きがあります。
皮膚は部位によって厚みは変わるものの、平均すると約2㎜ととても薄い膜で体を覆っており、その薄さでこれほどの作用を働かせているのです。
肌は色を認識する
肌は様々な役割を担いますが、色も認識します。
そもそも色とは光であり、光とは電磁波です。
青や赤、緑といった色の違いは、電磁波の波長の違いによるものなのです。
ではその電磁波の波長を肌はどのように認識できるのでしょうか。
詳しくご説明していきます。
肌は色を認識するタンパク質をもつ
結論から言うと、肌にも色を認識できるタンパク質があることが最新の研究で明らかになっています。

このタンパク質は「オプシン」と呼ばれるもので、もともと目の網膜に存在し、「オプシン」によって肌は青、赤、緑といった電磁波の波長をキャッチできるのです。
電磁波には視覚で認識できる「可視光線」と、視覚では認識できない「不可視光線」があり、「不可視光線」とはいわゆる紫外線や赤外線のことを指します。
人間の目には紫外線や赤外線は見えなくても、肌はそれらを認識し、紫外線によって日焼けをしたり、赤外線を暖かく感じることができます。
さらに肌に赤い光を当てることによって肌の回復力を早め、逆に青い光は回復が遅れるという結果も出ています。
肌は目よりも多くの色を認識し、そして色から様々な影響を受けていると言えるでしょう。
黒い服は肌を老化させる?!
肌が色を認識しているということは、普段身に着けている洋服の色からも影響を受けていると考えられます。
こんな実験があります。
【実験内容】 熟していない青いトマトに、赤、白、黒の布をそれぞれ被せて太陽光を浴びせると、布を被せていないトマトが完熟した時、布を被せた方のトマトはどう変化したか、という実験です。 【実験結果】 ・赤い布を被せたトマトは、完熟時期を越して腐りました。 ・白い布を被せたトマトは、布を被せていないトマトと同じくらいの熟し加減でした。 ・黒い布を被せたトマトは、青いトマトのまま萎びて枯れました。 【実験結果からみる色の効果】 赤色は太陽の光を強調させたことで、トマトの熟成を早めました。白色は光を反射するため、被せたトマトに影響がありませんでした。黒色は太陽光をすべて吸収してしまったことでトマトが成熟せず、そのまま萎びて枯れてしまいました。 |
このことから言えるのは、黒い服を着ていると肌に光が届かなくなり、肌が萎びていく可能性が高いということです。
つまり黒い服はファッショナブルで洗練されたイメージがありますが、そればかり着ていると肌の老化を加速させてしまうので、ほどほどに着用するのが良いかもしれません。
肌は匂いを感じる
香りを感じるのは鼻、と思いがちですが、実は肌にも嗅覚受容体があることをご存じでしょうか。
近年の研究によって肌の嗅覚受容体が香りの成分を感知し、香りに応じた特定の反応を示すことが明らかになってきています。
これから研究が進めば、香りが肌に与える影響によってスキンケアを選ぶ時代がくるかもしれません。
肌感覚が心に及ぼす影響について
肌感覚は、ダイレクトに人の心を左右します。
肌と心が密接に関わっている影響について、詳しく解説していきます。
肌を温めると心も温かくなるワケ
人は肌の一部を温めると、他人に対して優しい感情が芽生えることがアメリカで行われた実験により明らかになっています。
身体的な温かさを感じることで大脳の一部が刺激され、心理的な温かさを感じる部位も同じように興奮するのです。
つまり身体的な感覚と心理的な感覚を司るのは、脳の同じ部位が関与しているからこそ起こる現象と言えます。
ちなみに肌の一部を温めることで、人との距離感が近くなったり、人を信頼しやすくなることも実験結果により判明しています。
このように肌は受けている温度によって、自らの意思決定が左右されるのです。
肌触りは心を変化させる
肌触りが心地よいか、それとも嫌な感覚かによっても、人はその刺激によって心を変化させます。
アメリカの心理学者が、64人の通行人を対象に半数に表面が滑らかなピース、残りの半数をサンドペーパーで覆った粗いピースでパズルをしてもらうという実験をしました。
その後、全員が宝くじをもらって相手と分け合うゲームをしたところ、滑らかなピースでパズルをしたグループは、約7割が協調的な分け方をした一方で、粗いピースでパズルをしたグループは、約75%が自己中心的な分け方をしたのです。
この実験から人は心地よいものを肌で感じると、他者に対して寛容な精神を持ったり協調的になるのに対し、嫌な感覚のものを肌で感じることで、自己中心的な決定をしてしまう傾向にあることがわかりました。
肌触りだけで、心はこれほど顕著に選択の結果を変えてしまうのです。
肌は心を癒す
肌は心を癒すと言えます。
私たちが生命を繋いでいくにあたって、肌という存在の意味にも触れながら解説していきたいと思います。
人からの肌のタッチングはリラックス効果がある
人から肌に触れてもらうことでリラックスしたり、安心感を覚えたことはないでしょうか。
この現象は触れられることで肌が温かさを感じ、優しさや安心感を取り戻すからとも言えるのですが、もっと深い理由も関わってきます。
それは、人は触れられなければ育たないということが実証された実験に基づいています。
13世紀、神聖ローマ帝国皇帝のフリードリヒ2世が、産まれたばかりの赤ちゃんを一切あやしたり触れることもせずにお世話をすると、赤ちゃんはどのように育つかを実験をしました。
すると、50人もの赤ちゃんが1年も経たずに亡くなってしまったというものです。
赤ちゃんが亡くなったのは、スキンシップを受けられなかったために成長ホルモンの分泌が止まってしまったことが原因でした。
このことから言えるのは、人は触れられるという行為がなくては生命を繋ぎ留められず、今私たちが生きているのは、赤ちゃんの頃から親などのお世話してくれた人から充分なスキンシップと愛情を与えてもらえていたからに他なりません。
つまり、人からの肌のタッチングがリラックス効果をもたらしてくれるのは、自分に向けられた愛情が肌を通して脳が記憶し、触れてもらう度にその時の安心感を思い出すからなのです。
肌のケアは心のケアにつながる
肌は人に触れてもらうだけではなく、自分でケアすることによっても深い癒しにつながります。

それは肌をケアするということは、脳=心にも影響を与えるからです。
何故なら肌と脳は起源が同じで、そのことを「皮脳同根」(ひのうどうこん)と言います。
肌と脳はどちらも受精卵が分裂した際にできた「外胚葉」という細胞から分化しており、このことから肌と脳は密接に関係し、また非常に似た構造を持っています。
私たちは普段何気なく肌ケアしているつもりでも、実際は脳のケア・心のケアまでしているということになるのです。
また、人は普段から不安や痛みが起きた時、手(肌)で体をさすり、それらの緩和を促すことがあります。
それは、手が体に起こるあらゆる症状を鎮める癒しの力を持っているからなのです。
つまり自分の手で自分をケアするということは、体を包む肌を通して、体、脳、心といった自分自身の全てを深く癒すということにも繋がるのです。
まとめ
私たちの肌は、とても複雑な機能をもって日々の生命活動を繰り返しています。
しかし大切なことは、この世界にあなたが産まれてから愛されてきた記憶を、肌は脳を通して保持し、一生涯忘れることは無いということです。
それにより人や自分からの温かいタッチングを感じるたび、肌は優しい気持ちや安心感をあなたにプレゼントしてくれることでしょう。
愛されてきた自分自身を慈しみつつ、体・脳・心の深い癒しに繋がるスキンケアを日々楽しんでくださいね。
この記事の執筆者

倉嘉れんね
NARD JAPAN認定 アロマ・インストラクター取得
ライター/絵本作家。アロマセラピストとして8年間従事し、多くの女性の心と体の揺らぎに寄り添う。心や体の変化に伴う相談を受けてきた経験から、セラピスト活動の一環として大人の癒しのための絵本作家活動も行う。